はじめに
中国は2025年に60歳以上人口が3億人を超えて「中度高齢化社会」へ突入すると言われている。
そもそも高齢がどのように定義されているのかを調べてみた。(以下は中国語記載の漢字をそのまま訳したもの)
【WHOの基準】
・青年人:44歳以下
・中年人:45~59歳
・年軽老年人:60~74歳
・老年人:75~89歳
・長寿老人:90歳以上
【中華医学会、老年医学学会の基準】
・中年人(老年前期):45~59歳
・老年人(老年期):60~89歳
・長寿老人:90~99歳
・百歳老人:100歳以上
以下の中国政府高齢化政策がどの年齢を対象にしているのか分からないが、先ずは2021年に各政府部署から発表された政策をまとめてみた。
2021年も、高齢化に関する政策・発表文書が多く出された。
・施設・設備面からの対応
・保険・金銭面からの対応
・デジタル技術の活用 等
人口ボリュームの増える高齢者にとって暮らしやすい社会を構築すべく、各政府部署がそれぞれ対応している状況だ。
次からは「保険・金銭面の対応」である介護保険制度にスポットを当てて紹介したい。
中国 介護保険制度の現状
長期介護保険制度のパイロット政策だが、全国的なものだとこれまで2回発表されている。
【2016年6月発表の都市】
・吉林省長春市、黒龍江省チチハル市、上海市といった15の都市
・吉林省・山東省(国家パイロット重点省)
【2020年9月発表の都市】
・北京市石景山区、天津市、山西省晋城市といった14の都市
初期からパイロット都市となっている上海市について。2022年1月から施行された内容をまとめてみた。(以下スライド)
以前紹介した北京市や深圳市と同様、上海市でも公的医療保険制度を活用して財源を賄っている。(上海市の場合、対象は都市従業員基本医療保険加入者+60歳以上の城郷居民基本医療保険加入者)
ちなみに長期介護保険制度は、現状強制加入ではないことを注記しておきたい。
上海市の内容だが、介護等級ごとに受けられるサービス・保険金の程度が異なる。これは、国務院から15年ほど前に提起された「9073介護モデル(※)」の考え方に基づいた内容と言える。
(※)在宅介護90%・社区介護7%・施設介護3%の比率を目指す考え方
さいごに
介護保険制度だが、パイロット都市毎に、「加入対象者」・「介護認定の仕組み」・「財源の集め方」・「給付基準」などが異なる。医療保険制度のような「全国レベルでの体系構築+各地域での詳細ルール設定」という形が形成されるまでは、まだまだ時間を要すると考えられる。
また介護保険だけに限らず、介護人材の育成・確保といったサービス提供側へのサポートも充実させなければならない。
次回は、先日国家衛生健康委員会から発表された《医養結合示範プロジェクト業務方案の通知》を紹介したい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。