2022年10月24日、国家衛生健康委員会の老齢健康司より《2021年国家老齢事業発展公報》が発表された。
内容としては、以下の各項目に対する対応政策や現状などが数値で示されている。
【2021年公報の概要】
1.人口高齢化概要
- 60歳以上人口:2億6,736万人(人口の18.9%)
- 65歳以上人口:2億56万人(人口の14.2%)
2.中国における老齢事業の発展
① 2021年に発表された高齢化業務政策体系
② 老齢健康サービス
- 新型コロナへの対応(60歳以上のワクチン接種者:2億1,788万人)
- 老齢健康サービス(15の地域で失能予防パイロット施策を展開、歯科健康教育の展開など)
- 医療+養老の結合(医養結合施設が6,492軒に、前年比10.8%増)
③ 養老サービス体系
- 養老サービスの供給(養老サービス施設が35.8万軒、養老ベッド数が815.9万床
- に。社区養老サービス施設が31.8万軒、ベッド数が312.3万床に)
- 養老サービスの最低保障(3,994万人に高齢者手当を享受)
- 養老サービス品質(規範・ガイドライン等を制定)
④ 民生保障
- 養老保険(基本養老保険への加入者が10億2,871万人に、前年比3,007万人増加)
- 医療保険(基本医療保険への加入率、安定的に95%以上を確保。また基金収入は前年比15.6%増、支出は前年比14.3%増)
- 長期介護保険(49のパイロット都市における加入者が1億4,460万人、享受された方が108.7万人になった。長期介護保険のサービス施設は6,819軒、服務人員が30.2万人になった)
- 基本生活救助(全国の最低生活保障対象者が737.8万人、うち60歳以上は139.5万人。最低生活保障額は平均711元/月、前年比5%増)
⑤ 経済産業の発展
- 国家計画による先導(“十四五”国家老齢事業発展・養老サービス体系プランなど)
- 老年用品産業(工業情報化部などによる政策の発表)
- 健康養老産業(2017年以降、モデル企業数は202社となった)
⑥ 老年友好型社会
- 居住環境
- 高齢者の社会参画(28の省級社区教育指導センターを、280以上の地市級社区教育指導センターなどを設立)
- 高齢者のデジタル技術活用問題を解決
- 社会意識の醸成(養老・孝老・敬老)
- 高齢者権益の保障(詐欺被害件数の増加)
- 長々と書いてしまったが、上記は《2021年公報》から一部内容を抜粋したものであるので、詳細は原文を確認いただきたい。
- 日本の場合、高齢化社会のニーズとして一般的には以下のような項目が挙げられる。
- 就業・所得
- 健康・福祉・介護
- 学習・社会参加
- 生活環境(単身世帯、外出手段、事故、詐欺被害等)
先述した《2021年国家老齢事業発展公報》と日本の状況を比較すると、類似した項目が多いことを改めて感じる。
一方、中国では14人のうち13人が家族と同居するというデータもあり(中国2021年統計年鑑より)、日本にある高齢者単身世帯といった話題は今のところ顕在化していない。
中国の方と話していると、こんな話を聞くことがある。
- 今の高齢者は自身が若かった頃(約50年前)に比べると、生活レベルは向上し快適に過ごせている(と感じている)人が比較的多い。
- そのため自身のためにお金を使わず、下の代へ回す人が多いように感じる。
- 高齢化が問題のようにメディア等で扱われているが、高齢者にとっての真のニーズがどこにあるのか見えづらい。
- 上記意見を裏付けるデータを用意できていないが、感覚的には納得できる意見である。
「少子高齢化」という言葉にすると、人口減少は国力低下に繋がるので、今後中国でも高齢者の就業延長などが促進されていくことだろう。
また「公的医療費抑制」という観点から見ると、高齢者向け健康サービスや、日本のような介護サービスに対してこれまで以上にスポットが当たるとも考えられる。
また財源問題も解決しないと、養老サービス提供者の給与レベルを上げられないし、サービスを受けたい高齢者への社会保障も提供できない。これについては、長期介護保険をはじめとした制度設計が今後も進められていくことだろう。
高齢化社会の何が問題で、今後どのようなニーズがあるのか?
《2021年国家老齢事業発展公報》を見ながら私自身が思ったことを、今回つらつらと書かせていただいた。結論のない文章で恐縮だが、中国の高齢化を考える際の参考になれば幸いです。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。