OTC薬の話題に入る前に、ここ25年間における“医薬衛生”に関する5か年計画の重要テーマを上記スライドにまとめたので紹介したい。
20年ほど前、重点は医療衛生環境の改善だった。特に農村部では医療環境や医療保障制度が整っておらず、都市部との差は大きいものだった。
それを改善すべく、15年ほど前に国民皆保険や基層医療衛生サービスが整備された。
医療保障環境が整った後に顕在化された課題が、公的医療費の負担増だ。
2018年3月に国家医療保障局が設立され、「4+7帯量購買(現在のVBP)」、「薬剤加算の廃止」、「NRDL国家談判スタート」、「薬剤比率制限」といった医療費抑制策が具体化されたのが、ここ数年間の話である。
第十四次五か年計画(2021~2025年)に目を移すと、国内企業の発展が新たなテーマとして掲げられている。(医薬工業発展計画、医療機器産業発展計画、中医薬発展計画)
本日のテーマであるOTC薬だが、上記視点で見ると以下のようなテーマと関連する産業である。
- 公的医療費の抑制
- 中医薬産業の発展
- 健康中国2030 KPI目標の達成
それでは本日のタイトルである「中国OTC市場の現状」を、マクロデータを用いながら紹介していく。
上記は、2018年以降の中国OTC市場規模推移(左グラフ)と、医薬品市場全体に占める割合(右グラフ)をまとめたものだ。処方薬の市場規模推移に比べると、この数年間は大きな変動の少ない市場である。
OTC薬市場における化学薬・中成薬の市場規模推移をまとめた。金額ベースで見ると中成薬が約60%を占める状況が続いている。
ここから上市されている品目数について、いくつかの視点で紹介したい。
左グラフは、中成薬・化学薬の品目数とその比率である。
右グラフは、甲類OTC・乙類OTCに「双跨薬」の分類も加えたデータだ。「双跨薬」とは、
処方薬・OTC薬の両方に登録されている医薬品を指す。
先程同様、上市されている品目数について。
左グラフは、NRDL収載品・非収載品の品目数・比率である。現状OTC薬の約25%がNRDLへ収載されている。2020年9月1日に施行された新NRDLルールでは、「OTC薬のNRDL追加収載が今後原則禁止とすること」が発表されたので、NRDL収載品の割合は今後減少する。(ちなみに新NRDLルールのパブコメ版では、乙類OTC薬をNRDL収載対象外とする旨が書かれていたが、正式版ではその文言が削除された。)
右グラフは、NEDL収載品・非収載品の品目数・比率である。
最後にこちらは、単独メーカー・複数メーカーの品目数・比率(左グラフ)と、国産品・輸入品の品目数・比率(右グラフ)である。
以上、概要レベルであるが、中国OTC薬市場の現状を紹介した。
中国OTC薬市場を議論する際、以下のようなキーワードをよく見る。
【医療消費ニーズの向上】
- 2022年、国民1人あたりの医療消費に対する支出は平均2,120元。支出全体(24,538元)に対する医療消費の割合は約8.6%
- 医療に、食品・住居・交通・教育を加えた5つが、五大社会支出項目と言われている
【加速する人口高齢化】
- 65歳以上の人口比率が14%を突破
- 2025年には65歳以上人口が全体の26.9%、約4億人になると予想
【健康意識・ニーズの多様化】
- 抖音(TikTok)、小红书といった新媒体による情報発信・拡散
- 95後・00後を代表とする健康ニーズの多様化
現状を俯瞰しつつ、中国OTC薬市場の変化を想像していきたいと考えている。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。