はじめに
中国の社会保険は、“五険一金”で構成されている。
・養老保険(年金保険)
・医療保険
・失業保険
・工傷保険
・生育保険
・住房公積金(住宅積立金)
中国の公的医療保険制度については、これまでも本ibgHealthcare Newsで何回か紹介してきたので、そちらを参照いただきたい。(2020年11月12日「公的医療保険収入の減少による影響」等)
今回は、養老保険(年金保険)について紹介したい。
2021年5月に国家統計局から発表された《第7回全国人口調査》だと、60歳以上の人口が2億6402万人に、全国民の18.70%を占める状況となった。2010年に比べると、5.44%アップしている。
それでは、高齢化の進む中国における公的年金制度を見ていこう。
中国公的年金制度の概要
中国の公的年金制度だが、主なものは上記2つである。
細かい補足説明やデータ源は、(※1)~(※5)を参照いただきたい。
また財源は「保険料(納付額)」以外に、中央政府・地方政府からの補助も基金収入にあることを追記しておく。
中国公的年金の加入状況・収支状況
【左側】
・先程紹介した「都市従業員基本養老保険」と「都市・農村住民基本養老保険」への加入者数の推移
【右上】
・「都市従業員基本養老保険」の収支状況。2020年はコロナ対応優遇策により収入が大幅減
【右下】
・「都市・農村住民基本養老保険」の収支状況
中長期的な収支改善のために、「受給開始年齢引き上げ」の話題が中国でもこれまで何度か取り上げられてきた。その度に大衆からの強い反対意見が出ており、まだこれが変更されていない状況だ。
民間の商業養老保険への期待
2014年8月10日、国務院から《現代保険サービス産業の早期発展に関する意見(中文:
关于加快发展现代保险服务业的若干意见)》が発表された。
この中で「個人積み立て型養老保険の発展」についても言及されており、中国政府は高齢化社会へ対応すべく、当時から民間サービスの発展を促進していた。
民間の商業養老保険だが、基本的には以下の4種類がある。
【配当型養老保険】
・一定の運用益を受けられる個人年金保険
【両全保険】
・保険料支払い期間が短く、運用益が比較的高い保険
【投連保険】
・中長期的な投資積立保険。疾病・介護等の保障もついている
【万能保険】
・比較的安定した運用益を見込める保険
公的年金制度の今後の改革だけでなく、民間の年金保険サービスにも引続き注視していきたい。
さいごに
中国の社会保険(五険一金)である、「養老保険(年金保険)」と「医療保険」を分析すると、以下の共通点があることに気づく。
【共通点】
・都市従業員とその他(農村戸籍等)の間に存在する大きな受給格差
・高齢化や医療レベルの向上により圧迫する公的財政
・公的サービスに加えて民間サービスでも対応する方針(イノベーション創出含む)
2021年3月11日に全人代で承認された第14次5か年計画では、以下が謳われている。
【2035年Vision】
・平均GDP:中等発展国家Level
・中間所得層:大幅に増加
・都市農村格差:大幅に縮小 等
年金・医療に関する課題をクリアしながら、Vision実現へ向けて中国が今度どのように進んでいくのか?
引続き様々な視点から分析していきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。